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さて、最近はしつこいようですが山崎豊子さんの『不毛地帯』を読んでいます。

表現が濃く、読み飛ばすのが勿体ない小説で、進みも遅々としているのですが、山崎豊子さんはこの小説を書くにあたって様々なところへ取材されたようで、シベリアはじめ世界各所へ足を運ばれたのだそう。
豊子さんは毎日新聞学芸部の記者(部長は井上靖さん!)だったのだそうですが、小説執筆についても取材能力をあますところなく発揮されています。極寒のシベリアのくだりは、読んでいて本当に寒々しく、抑留の厳しい生活が生々しく迫ってきます。

最近、いわゆる「おもしろいもの」というのは、筆者の体感なしにはあり得ないと、いまさらながら考えます。
現場の空気というのは資料になるだけでなく、さまざまなインスピレーションをもたらしてくれるものなので、書く側もいろいろなところに行き、いろいろな思いをしないと、読者にそれが伝わらず、机上の空想だけでは「おもしろさ」に限界がくるのかもしれません。

かといって、実際に書く時間も必要ですし、実地体験できないこともあります。
そこは空想力でカバーというか、対象にとことん感情移入する姿勢が必要なのだと思います。
豊子さんも、シベリア抑留体験者にずいぶんヒアリングをされたようですが、聞きながらもその話にはいりこみ、共感する回路がないと、作品にこうも生々しく取り入れられないと思うのです。

作家さん、しかも一流の作家さんとは、これまでにも接する機会がたくさんありましたが、皆さん「いい人」です。
個人的には性格の悪い作家さんは会ったことがなく、後輩の身を気づかってくださったりするのですが、それも職業柄、感情移入が極めて上手な方々だからなのかもしれません。
昔から作品好きというよりは「作家好き」なほうなのですが、そうしたもろもろが、ひっくるめて尊敬の対象ですね。

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